まかせる

「まかせる」って良い響きですよね。今まで自分がやってきた仕事を誰かが
やってくれる。それはなんだか解放されて、肩の荷がおりて、そんなパラダ
イスを想像してしまいます。

「まかせる」をビジネス書で検索すると出るわ出るわ。「まかせる力」「部下
に9割まかせる」「任せる技術」等々。さらに「社長は仕事をやめなさい。」
なんていう本も。それって日々仕事に苦悩している社長さんや上司の皆さん
が、苦しくて解放されたくて、ついつい手に取ってしまうのではないかと思
います。

私もその一人で、そんな言葉につられて一生懸命社員に任せようと頑張って
おります。・・が、パラダイスが訪れることを期待しても、一向に訪れる気配
はなく、むしろ苦悩が深まるばかり。

満50才にしてやっと気づきました。「まかせる」という言葉は、作業、行動
を委任するだけで、責任は自分に残っているのだと。責任まで部下に取らせ
てしまえば文字通り「無責任」。全然解放されるわけではないのです。だから
まかせればまかせるほど、責任だけはどんどん増えていく。まかせた仕事も
自分でだって容易にはできないのに、自分よりキャリアも浅い部下がやるわけ
ですからそんなにうまくいくわけない。だから苦悩ばかり積みあがっていく。

だから、まだ未熟な部下に仕事を任せた上司は、心配で心配でいてもたっても
いられず「あれどうなった?」「それは明日まで大丈夫か?」とガミガミ言い
ながら進めていくことになります。私はそんな苦悩する姿が、本来の正しい
「まかせる」の姿だと思うのです。